CROSSING 2024 Green
Special Report
Crossing 2024 Green 開催レポート
2024年の初春、香川県高松市にある活気あふれる「丸亀町グリーン」ショッピングモールが、アートと文化の交差点に変わりました。1月14日から28日にかけて開催された「SETOUCHI ART COLLECTIVE CROSSING 2024」は、"アートがもっと身近に"というテーマのもと、日常生活に織り込まれたアートの体験を提供し、地域のアートシーンに新たな息吹をもたらしました。
この特別なイベントでは、瀬戸内海で活躍する12名の才能豊かなアーティストたちが、彼らの情熱と創造力を映し出す作品群を展示・販売。昨年の盛況を受けて、今年は昨年1階の会場に加え、さらに広々とした2階フロアを使い、アートと日常が調和する空間を創出しました。会期中はのべ2000人の来場者が訪れ、ショッピングの合間に、予期せぬ美の世界に触れ、心を動かされました。
イベント初日は、アーティストたちが自ら作品に込めた情熱や背景を語る、心温まるアートツアーで幕を開けました。この特別な日には、地域の事業者、メディア関係者、広告代理店の皆さんが集い、創造の背後にある物語に耳を傾けました。
一般公開が始まった15日からは、地元住民や学生、家族連れなど、多様な来場者がアート作品との対話を楽しみました。週末にはアーティストやスタッフによるガイドツアーが開催され、来場者は作品の解説に魅了されていました。
アート作品の販売も好調で、作品をご購入いただいた方は県内の方はもちろん、出張で訪れていた県外の方もいらっしゃいました。お家に飾る方、事業所に飾られる方など様々ですが、みなさまアートによって豊かになる心を実感し、お買い物を楽しんでおられました。
さらに、ポストカード、クリアファイル、トートバッグ、ピンバッジ、ハンカチなどのオリジナルグッズの配布も大好評を博しました。
高松 明日香 (たかまつ・あすか)
画家
1984年香川県生まれ。主な展覧会に2021年「シェル美術賞アーティスト・セレクション2021」(国立新美術館・東京)、2019年「香川県文化芸術新人賞 高松明日香展 クラウディア」(香川県文化会館)がある。2016年四国こどもとおとなの医療センター(香川)にて検査科待合室の壁画を制作。2014年岡山県新進美術家育成「I氏賞」大賞受賞。様々な場所から引用されたシーンを、独自のトリミングと筆触を使って、絵画にしている。
高松明日香の作品群は、青色を基調に、映画などの架空のワンシーンを作品に落とし込んでいます。今回は大型の作品からドローイングの小作品まで幅広く展示。元々ファンだった方はもちろん、フラッと訪れた方からも大変好評でした。高松明日香ワールドを前面に出した展示となりました。
長野由美 (ながのゆみ)
1968年香川生まれ インスタレーション・造形を中心に活動。近年花をモチーフにイラストを再始動させ昨年から発表してる。2010年瀬戸内国際芸術祭2010オンバファクトリー(香川)2013年瀬戸内国際芸術祭2013夏(香川)2015年塩江アートプロジェクトEgg in WONDERLAND(香川)2017年CROSS POINT交差する視線20の表現(香川)など。
元々インスタレーションや造形を中心に活動していた長野は、近年平面作品にも取り組んでいます。今回は頭部がお花になった女の子のシリーズと、小作品「ふらわぁシリーズ」を展示しました。和紙にカラーの筆ペンで描かれた作品群は多くのお客様の目を惹き、「可愛い!」と声をあげる方も多数いらっしゃいました。細部までこだわりの詰まった作風には説得力があります。
藏本 秀彦 (くらもと ひでひこ)
1989筑波大学大学院芸術研究科修了。
2016「藏本利彦+藏本秀彦 絵画展~思考の断面、記憶の輪郭」/坂出市民美術館(坂出)、2017「CROSS POINT 交差する視線―20の表現」/香川県立ミュージアム(高松)、2018「高松市美術館コレクション+木村忠太とこぼれる光の中で/高松市美術館(高松)、2021「国讃めと屍」藏本秀彦・水谷一 美術展/瀬戸内海歴史民俗資料館(高松)、2022「せとうちの大気-美術の視点」(瀬戸内国際芸術祭参加展覧会) /香川県立ミュージアム(高松)など美術館での企画展に参加。コバヤシ画廊、ギャラリー山口などで個展を重ね、県内では丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、あーとらんどギャラリー、佐野画廊、gallery ARTE 、Kinco.hostel+café、などで個展開催。
高松工芸高校で教鞭をとりながら作家活動を行う藏本は、今回ドローイングのシリーズを展開しました。縦5cmの小さなものからポストカードサイズ、縦70cmの大きさのものまで、重厚感のある作品群を展示し存在感を発揮しました。特に、アートガチャポンは大人気。500円という手軽な値段設定もあり、たくさんの方が楽しまれていました。お一人で何回も挑戦される方も。ガチャガチャならではの楽しみ方をされていました。
松山真理 (まつやま まり)
1979年香川県生まれ。東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程美術教育専攻修了。
創作のテーマにあるのは自然のエネルギーや生命力、自己との対話。主に自然からインスピレーションを受けた絵画作品を制作している。近年は音楽の生演奏に合わせて即興で絵を描くライブペイントパフォーマンスを精力的に行なう。
主な展覧会に2021年「海に還る」BRIC(香川県)、2022年個展「画家松山真理 繋がる」 高松市塩江美術館(香川県)。ライブペイント出演多数。
自然からのインスピレーションを受けて抽象画を描く松山は、今回新緑の時期に美しい光が木々に降り注ぐ様子を描いた「Light shower」シリーズを展示しました。展示ブースの入り口付近を明るく彩り、お客様を引き込む役割を果たしました。風の感触、葉と葉が触れる様子、葉が風に靡いて揺らぐリズムなどを表現しています。
土井紀子 (どい きこ)
1997年山口県生まれ。2000-2003年アメリカバージニア州で育つ。現在、広島市立大学大学院芸術学研究科博士後期課程に在学中。2021年-広島市立大学版画工房ティーチング・アシスタント。2022年「WALL ART PROJECT“2045 NINE HOPES”」壁画制作(おりづるタワー/広島)。主な展示に、「merry-go-round」(タメンタイギャラリー/広島/2022)、「Texas and Hiroshima Small Works Exhibition」(広島芸術センター・TCU Small Gallery/広島・アメリカ/2019)、第 45 回 三菱商事アート・ゲート・プログラム(MC FOREST/東京/2019)など。コミッションワークに「アートルーム 海の部屋」(ル・ポール粟島/香川/企画:瀬戸内アートコレクティブ)など。
馬のフィギュアを用いた版画作品を展開している土井は、今回アクリル板と吉野手漉き和紙にシルクスクリーンで描いた作品群を展示しました。輪郭線を描かずにドットでシルエットを描き、透明感のある儚い夢の中のような世界観を表現しました。
PORTRATOR (ポォートレーター)
painter(画家)
1984年徳島県生まれ香川県育ち。2009年京都造形芸術大学美術工芸学科洋画コース卒業(現、京都芸術大 学)。人物画を中心に、近年は、iPadで描いたものを油絵の具で着彩してます。デジタルとアナログを往来し つつ、絵画で表現出来る幅を拡張しています。
iPad上で描いた作品をプリントし、デジタルとアナログの融合をテーマとするPORTRATORは今回二作品を展示しました。アンティークショップで購入した100年以上前の額縁と合わせた重厚感のあるリアリスティックな作品と、強烈なインパクトを与える髑髏の作品を展示しました。まるで写真のようだ、という感想を持つ方が多くいらっしゃいました。
辻孝文 (つじ・たかふみ)
ペインター
1985 山梨県生まれ。2006 モントリオール国際芸術祭(カナダ)カナダ日本フランス芸術友好賞。2007 メルボルン日本芸術祭(オーストラリア)日豪芸術様式美賞。2010 トーキョーワンダーウォール公募2010 トーキョーワンダーウォール賞。人の営みを軸に、近年は、繰り返される事、物事の多面性をテーマに作品を制作する。
人の営みを軸に、繰り返される事、また物事の多面性をテーマに作品制作をしている辻は、今回「戦争」をイメージした作品を展示しました。溶けて崩れ落ちそうなチューリップを繰り返し描き、生命の危機や経済の崩壊などを表現しました。壁一面に並んだ作品には圧倒されます。
鈴木 瑞穂 (すずき みずほ)
1984年東京都生まれ 2011年京都造形芸術大学(現 京都芸術大学) 大学院修了
自然の風景をモチーフに「色面、シルエット」をテーマに風景画を描く。2020年岡山駅地下道ショーウィンドウ展示、2021年グループ展「瀬戸内アートコレクティブ クロッシング」かまどホール(香川)、瀬戸内アートコレクティブ×東交バス バスペインティング デザイン担当(香川)個展「彩景」岡アートギャラリー、2022年両備バス車内アート展示プロジェクト(岡山)、2023年 個展「彼方からの光」岡アートギャラリー(岡山)岡山、香川を中心に活動
風景をアクリルや油絵で描く鈴木は、光と影をテーマに8点の作品を展示しました。淡い夕暮れの瀬戸大橋や、霧がかった森の風景、池に映った紅葉した木の風景などを描きました。近くで見るのと離れて見るのでは全く印象が異なり、その柔らかな印象が多くの方の胸を打っていました。
松本真里奈 (まつもとまりな)
1990年岡山県生まれ。京都芸術大学通信教育部卒業。主にボールペンで花を描き、人が欠けたものを表現している。2015年第66回岡山県美術展覧会 洋画部門 奨励賞、2019年第70回岡山県美術展覧会洋画部門 県展賞、2021年第31回全日本アートサロン大賞展写実表現部門 佳作、2023年第5回 in the room展スケッチブック賞、Setouchi Art Jackグランプリ受賞
ボールペンで細密画を描く松本は今回ボールペン画と抽象画を展示しました。特に抽象画は「ファーストアート」として初めてアートを購入される方にも手が届きやすいものを準備したと言います。カラフルで明るい作風が目を惹き、2階フロアでは最も多くの方が吸い込まれるように作品を見ていらっしゃいました。
名合貴洋 (なごう・たかひろ)
画家
1986 岡山県生まれ。2013 第10回小磯良平大賞展入選。アートオリンピア2019・アートオリンピア2022佳作。現在は、自然風景の観察をベースに、3DCGを織り交ぜ、光と影を意識した表現を試みる。自身の身体的局所性と、ネットワークでつながる情報世界の非局所性の間にある人をテーマに制作する。
印象派の光の捉え方をベースに、3DCGのような作品を展開している名合は6作品を展示しました。青や緑などの自然色を用いながら、モチーフを光と陰で捉え、彫刻のように着彩している作風は大変好評で、小作品は早めに完売となりました。ポストカードの売上も高かったようで、人気を得やすい作品でした。
樋口聡 (ひぐち・さとし)
作家•教員
1989 香川県小豆島生まれ 香川県立高松工芸高等学校美 術科で教諭として勤務 自分の生死をはじめ、答えのない疑問や不安に対する 戸惑いをインスタレーションで展開する。2021 個展 「(or not)」,「砂埃あげて Rush while raising dus」 2022 2人展「これから起きること」
生活の中に潜む不条理やジレンマをテーマに、身の周りに溢れる馴染み深い素材を使ったインスタレーションを展開している樋口は、今回3点の作品を展示しました。「UOSAO」というタイトルで、作家自身が右往左往している様子を表現しています。人感センサーで光り、動き出す装置をまじまじと見ながら、摩訶不思議な世界観に魅了される方が多くいらっしゃいました。
村田優希 (むらた ゆうき)
1997年 宮崎県生まれ 2020年 倉敷芸術科学大学 卒業
現在、福岡県在住。自身の創造した頭部に冠をもつ生命体を主にモチーフとしてSFや幻想文学から着想を得た平面作品を制作している。主題によって姿形を自在に変えるモチーフとそれを取り囲む独自の生態系を共に描く事で自然や生命の偉大さや不思議さを表現している。AFAFAWARDS2019入選(福岡アジア美術館)、AFAF2021(博多阪急)、FukuokaWallArtProject2021入賞 受賞、九大伊都 蔦屋書店 START ME UP 村田優希作品展 「華獣の苗床」 (九大伊都 蔦屋書店)、福岡市2023年5月「今月のアート」 (FukuokaArtNext)
定例会見にて福岡市長より作品紹介。 福岡市役所 特別応接室 作品展示、AFAF2023(マリンメッセ福岡B館)、生命の種 二人展(福岡市美術館)、ChristmasArt100(東京都 伊勢丹立川店)
恐竜のようなモチーフを用いて自然の不思議さ、偉大さを表現している村田は、5点の作品を展示しました。油絵で描かれた恐竜たちは今にも動き出しそうな力強さがあり、多くの方が足を止めて鑑賞されていました。
「SETOUCHI ART COLLECTIVE CROSSING」は、瀬戸内海の美を通じて地域コミュニティとの絆を深め、アートをもっと身近な存在にすることを目指しています。
次回の展覧会も、皆様に喜びとインスピレーションを提供するため、準備を進めています。次回のご来場を、心よりお待ちしております。